「シングルの男女が出会うためのサイトや、カップルが2人の絆を深めるためのサイトは数多く存在している。だが、男女がスムーズに別れるためのサイトやサービスはほとんど存在していない」

こう考えたのは、カナダ出身の兄弟Mackenzie(マッケンジー)さんとEvan(エヴァン)さん。2人は、男女が短時間でスムーズに別れられるサービス「The Breakup Shop」を今月オープンさせた。


「The Breakup Shop」が提供するサービスは大きく3つ。1つ目は依頼者にかわり、恋人にSMSやEメール、手紙で“一方的”に別れを伝えるもの。2つ目は電話で、相手の話も聞きつつ別れを切り出すもの。そして3つ目は別れた元恋人にプレゼントを贈り、別れた後でも友だち関係を維持できるよう支援してくれるものだ。


ここまで読んだ時点で、「そのサービス、おかしくないか?」という思った人もいるだろう。別れた後でも友だちでいたいなら、こんなサービスは使わずに自分で別れを伝えた方が良いに決まっているからだ。そうこのサービスは、ちょっとずれている。以下で、それぞれのサービス内容を見て頂きたい。

■あなたの代わりにEメールでお別れを~「Breakup Email」サービス
「Breakup Email」は、あなたの代わりにEメールで恋人に別れを切り出してくれるもの。サービス開始後、最も多くのオーダーがあったという。同様のサービスとして、SMSメッセージで別れを伝える「Breakup Text」、手紙で伝える「Breakup Letter」も提供している。

利用者は申し込み時に恋人の名前やEメールアドレス、別れたい理由、メールの送信希望日時などを伝える。The Breakup Shopは、そのヒアリング内容を元に、指定された日時にEメールを送信するという仕組みだ。


サイトの説明には次のようにある。

「別れは辛いもの。そしてEメールはこの辛い仕事をするのに、もっとも簡単な方法の1つだ。我々にその仕事を肩代わりさせて頂きたい。そうすれば、あなたのメールボックスが交際相手からの恨みごとで一杯にならないで済むだろう」

もうすでに突っ込みどころで一杯のこのサービス。利用すると、恋人にはどんな“別れのメッセージ”が届くのだろうか?「The Breakup Shop」のWebサイトに掲載されたメッセージ例を紹介しよう。

「ステファニーさん、

私たちは、ダニーさんの代わりにこのメッセージをお送りしています。

残念なお知らせですが、ダニーさんはあなたと別れることを望んでおられます。ステファニーさんはこれまで、ダニーさんと良い関係を築いてこられ、また2人ですばらしい思い出を作ってこられましたが、前に向かって進む時がきたようです。

今回の件についての心からの同情を申し上げさせていただくとともに、ステファニーさんの将来が素晴らしいものであることをお祈り致します」


上記例文はSMS版のものだが、Eメール版や手紙版のサービスもほぼ同様の文面となる。

さて、このようなEメールが予告もなくいきなり届いたら、人はどんな反応をするだろう?多くはスパムと考えてEメールを破棄してしまうのではないだろうか?また、これが本当に別れを伝えるものだと理解できたとしても、別れをEメールで切りだすというのは、それも人まかせにするというのはどんなものだろう? AKB48の横山由依さんでなくても、「あかん気がする」のではないだろうか?

サービスの価格は10ドル。申し込みから24時間以内にSMSメッセージを送る「特急」サービスなら20ドル必要となる。Eメールで送信する際に、申し込み者とその新しい恋人の写真を貼付して送るサービスは15ドルだ。申し込み者からみれば「安い!」と感じるだろうが、受け取った方は「10ドルで捨てられた?」と屈辱感を味わいそうな気もする。

手紙の場合は30ドル。わざわざ割れたハートの描かれた封筒で送付してくれる。


■あなたの代わりに電話でお別れを~「Breakup Phone Call」サービス
「Breakup Phone Call」は、申し込み者の代わりに電話で別れを伝えてくれるサービス。このサービスについては、米国メディア「Motherboard」が体験記を掲載している。

体験記はライターが自分のパートナーと別れたいとウソの申し込みをし、パートナーにどのような電話があったかを検証するもの。電話をかけて別れを伝える人の対応が“プロフェッショナル”なものではなく、不快なものであったことを伝えている。

パートナーはライターに対し、仕事とはいえこのようなひどい体験をさせたことについて「あなた、最低」となじったそうだ。


筆者は学生の頃、付き合っていた人の友人に呼び出され、別れを切り出されたことがある。その友人とは何度か会って顔見知りの間柄だったが、それでも本人がその場にいないことにかなりのショックを受けた。ましてまったく知らない人から電話があり、恋人が別れたがっていると切り出されたときには、どのような気持ちになるものだろうか?

ちなみに、「Motherboard」の体験記事は「The Breakup Shop」のInstagramサイトからリンクが貼られている。サービスの不利になりそうな記事をリンクするその感覚は、ちょっと理解しがたい。

■ずっと友だちでいたいから、別れの贈りものを~「Breakup Gift Pack」
最後に紹介するのは、別れる相手に贈るギフトパック「Breakup Gift Pack(失恋ギフトパック)」だ。突然シングルに戻った人が、一人の寂しい夜を過ごすのにぴったりなものが詰まっている……………と、「The Breakup Shop」は述べている。

別れた相手と良好な関係を保ち、ずっと友だちでいたいときに贈ると良いというこのギフトパックは、残念ながら商品セレクトのセンスが微妙だ。チョイスした人の“上から目線”な感じがひしひしと伝わってきてしまうので、客観的に見ている分には面白いが、実際に自分のもとにこれが贈られたときのことを想像すると、目の前が怒りで深紅に燃える。

ギフトその1は、映画『君に読む物語』のブルーレイディスク。良い映画だとは思うが、別れた直後に一人で深夜に見るストーリーとしてはちょっとどうかと思う。筆者なら恋人と別れたばかりの人には『恋人たちの予感』を勧めるが、それはさておき、自分が振った相手に対して映画を贈ってはいけない気がする。

「恋人と別れたばかりの友だちにどんな映画を勧める?」というのは、  居酒屋などでは意外と盛り上がる話題だ
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映画『君に読む物語』は、PS4のゲーム「コール オブ デューティ ゴースト」と置き換えることが可能だ。

ギフトその2はNetflixのギフトカード。恋人に捨てられた人は、よほど時間を持て余すとでも思っているのだろうか?


その3は「チップスアホイ!」300グラム入り1箱。家で1人で映画を見るには、ビスケットが必須ということのようだ。


その4はワイングラスの2個セット。別れたばかりなのに、これをもらってどうしろというのだろう?


そして最後は、これらのグッズを入れるギフトボックス。わざわざ割れたハートの絵が描かれたものだ。


「The Breakup Shop」によれば、このギフトボックスは「思い出を燃やすオーブン」として使えるという。自分を振った相手からの贈りものや写真、それに相手が部屋に残した下着などをこの箱に詰め込み、安全な場所で火をつけて盛大に燃やせば、気持ちがすっきりするとしている。

まぁ、それは分かるとして、ボックスの中身はやはりいただけない。別れた相手からワイングラスを贈られて喜ぶ人などいるわけがない。「箱ごと送り返してやりたい」と考えるのが普通だろう。

■このサービスは成功する?
「出会いのためのサイトがあるのに、別れのためのサイトがないのはおかしい」。「The Breakup Shop」のこの主張を読んだときには、少しだけ「なるほど」と思ってしまった。

だが、サービス自体は大分ピントがずれている。ビジネスを軌道にのせるにはかなりのチューニングが必要だろう。そしてなぜピントがずれているのかと言えば、創業者の2人に恋愛経験が不足しているからだと想像される。何の根拠もない単なる憶測に過ぎないが、サービスを見ているとそんな気がしてならない。サービスの質を向上するには、2人がもっと恋愛を経験し、別れの体験をするべきかもしれない。