『スタートレック』の「万能翻訳機」から、『ドラえもん』のひみつ道具「ほんやくコンニャク」まで、SFの世界ではたくさんの自動翻訳装置が描かれてきた。

我々はSFの世界にまた一歩、近づけたのかもしれない。ニューヨークのスタートアップWaverly Labsは、耳に入れて使うイヤーピースタイプの翻訳機「Pilot」を発表した。


自動翻訳装置はすでに多くのモデルが販売されている。だがその多くはキーボードでの言語入力が必要な“逐次通訳”とも言えるシステム。コミュニケーションに時間がかかるという問題点を抱えている。

「Pilot」は、“同時通訳”への進化を目指す自動翻訳装置。目の前の相手の喋っている言葉をリアルタイムで翻訳し、イヤーピースから音声で伝えてくれる。


イヤーピース内部にはマイクが内蔵されており、音声をキャッチしてスマートフォンに転送する。スマートフォン内のアプリは音声認識を使用して音声をテキスト化。これを機械翻訳であらかじめ設定された言語へと翻訳するという仕組みだ。翻訳されたテキストは、テキスト読み上げ機能で音声変換され、イヤーピースから音声として流される。


「Pilot」は世界を旅する旅行者向けに設計された製品。場合によっては、ネットワークに接続できない状況に陥ることもあるだろう。Waverly Labsはこれに対応するため、オフラインでも利用できるよう「Pilot」の開発を進めているそうだ。


SFの世界と比べると、「Pilot」にはまだまだ制限がある。誰かとコミュニケーションを取る場合、自分だけでなく、相手にもイヤーピースを装着してもらう必要があるのだ。これは少し面倒かもしれない。

また、機械翻訳を利用する以上、その翻訳品質には不安が残る。Google翻訳などを使って海外のWebサイトを翻訳した人は、翻訳された日本語の意味がさっぱりわからず、頭を抱えたことが一度はあるだろう。「Pilot」の翻訳は、Google翻訳の品質を上回ることはないと考えて良いようだ。

とはいえドイツ語から英語など、欧州言語間の翻訳であれば、機械翻訳はすでにそれなりのレベルに達している。そのためか、「Pilot」の初期出荷版は欧州言語のみをサポート。その後、ヒンディー語、スラブ語、セム語、その他の東アジアの言語に対応した「追加言語パッケージ」を有料で販売するそうだ。


開発元のWaverly Labsは、5月24日頃からクラウドファンディングサイトIndiegogoでキャンペーンを開始。「Pilot」のプリオーダーを受け付ける。市販開始後の価格は249~299ドル程度になる見こみだが、Indiegogoのキャンペーン中であればアーリーバード版が129ドルで提供される予定だ。アーリーバード版完売後は149ドル、179ドルと、入手に必要な金額が少しづつ上昇する。

また、キャンペーン開始直後の5月24日、25日に予約を申し込んだ人には、「追加言語パッケージ」を無料で入手できるという特典が与えられるそうだ。


個人的には、「Pilot」が周囲の音声すべてを翻訳するところまで進化するのを待ちたい。例えば海外でウォーキングツアーに参加したとき、ガイドの説明が現地の言葉のみで、まったく理解できないということがある。そのガイドの説明を翻訳してくれれば助かるという人は多いだろう。また、その土地の伝承を元にした芝居や人形劇なども翻訳可能になれば、旅の楽しみがより広がるのではないだろうか?